キャバクラ開業には許可が必要!
キャバクラでは接待を行うので開業するには風俗営業許可の取得が不可欠です。接待の定義があいまいなこともあり、小規模のスナックやラウンジなどでは接待を行っていても風俗営業許可を取得せずにこっそり営業している店も多くありますが、さすがにキャバクラのような目立つ店ではそれもできないでしょう。すぐに警察がやってきて、運が良ければ口頭注意で済みますが、大抵は後日警察署でいろいろと書類を書かされることになるでしょう。最悪の場合は悪質とみなされて即刻逮捕もあり得るかもしれません。以前と違い警察も違法店舗をそうそう見逃してはくれません。大事に至る前にしっかりと許可を取得して堂々と営業を始めましょう。
許可の申請は時間に余裕を持って!
風俗営業許可は申請から許可が下りるまで2ヶ月弱と、かなり長い期間がかかります。許可の申請を忘れていると、許可の取得が開店に間に合わないなんてことにもなりかねません。お店の改装や従業員の募集の前に許可取得についてはしっかりと計画を立てておきましょう。
また、許可が下りるまでは営業を開始することはできないので、その際のカラ家賃の支払いなどについても十分に考慮しておきましょう。
行政書士に依頼するのであれば、すでに店内の改装が済んでいることを前提として、お店のオープン予定日から逆算して2ヶ月(審査期間)+10日程度(受任から申請まで)は最低でも期間がほしいところです。オープン予定日まで2ヶ月を切ってしまうと、どんなに手慣れた行政書士でもオープン予定日までに許可を取得するのは不可能となります。
まずは、許可を取るための要件を確認する
風俗営業許可を取得するための要件として「人」「場所」「構造」の要件があります。他にもクリアすべき要件はいろいろとありますが、とりあえず最初の段階では「人」「場所」の要件がクリアできているか確認できれば許可が取得できる可能性がかなり高いと言えるでしょう。
特に「人」の要件についてはクリアできていない場合は対処のしようがないので許可が取れる可能性がかなり低くなると言えるでしょう。
飲食店許可は事前に取得しておく
風俗営業許可の申請の際には飲食店許可証の写しが必要となるので、警察へ申請する前までには飲食店許可を取得し、保健所から許可証をもらっておきましょう。
飲食店許可取得については▶こちら
自分は許可申請できる人?
まず「人」の要件ですが、まずはこの要件を確認しておかないと前に進むことはできません。この要件がクリアできなければその時点で許可を取ることは諦めざるを得ないからです。
申請者は下記の欠格要件に該当している場合は許可を取ることができません。また、法人申請の場合は役員全員が欠格要件該当していないことが必要となりますので、事前に役員全員にしっかりとヒアリングしておきましょう。
<人的欠格要件>
・成年被後見人、被保佐人、破産者
・過去5年以内に風営法、売春防止法、その他の法律に違反し、懲役、罰金刑等を受けている
・アルコール、麻薬等の中毒者
・風俗営業許可を取消されて、5年経過していない
・営業に関して成年者と同一の能力を有しない未成年者
風営法違反については、その違反内容により5年の経過期間が必要になりますので該当する可能性のある場合は事前に警察へ確認したほうがよいでしょう。
管理者も欠格要件に該当してはダメ
風俗営業の店では管理者を選任しなければなりませんが、管理者は申請者以外の人でもなることができます。ただし、管理者となる人も申請者と同様に人的要件をクリアしている必要があります。また、管理者はその店舗に常駐する必要があるため複数店舗の管理者を兼任することはできません。
物件「場所」を決める
次に「場所」の要件ですが、風俗営業許可を取得して営業する場合はどこの場所でもいいというわけではありません。
風俗営業は風営法にて営業できる地域(用途地域)が限定されておりこの地域以外で営業することはできません。また、店舗から決められた距離以内に保全対象施設がある場合も営業することができないため、気に入った物件があった場合でもすぐに契約せずに、その店舗の場所が風俗営業ができる地域なのか、また近くに保全対象施設がないかを確認する必要があります。
用途地域に関しては市役所に連絡して店舗の住所を伝えれば用途地域を教えてくれますが、保全対象施設に関しては店舗の近隣を歩いて調査したり、ネット検索等をしてしっかりと調べる必要があります。複合ビルに入っている施設や現在建設中の建物についても注意しなければなりません。
※保全対象施設については▶こちら
※用途地域については▶こちら
前の店で許可が取れていても安心できない
物件を決める際に注意が必要なのは、以前その場所で許可が取れていたからといって今回も許可が取れるとは限らないということです。
用途地域が変更になることはそうはありませんが、保全対象施設はいつどこにできるかわかりません。前店舗がその場所で営業していた当時は近くに該当施設が無くても、その後に近くに保全対象施設ができてしまった場合は、その場所ではもう風俗営業許可が取れなくなってしまいます。
物件の所有者や不動産屋などに「前のお店のときは取れてたので~」と言われても鵜呑みにせずに自分でしっかりと調べることが大事です。
1mを超える高さの設備には要注意
「構造」要件で注意するのは、客室内にある1mを超える設備に関してです。
風俗営業を行う場合、客室内に1m以上の高さのある設備を置いてはいけません。
たとえば、テーブル、イス、棚、間仕切りなどは床から一番高い部分までが1mを超えてしまうと設置ができませんので1m未満のものに変更する必要があります。
特に、客席同士の間にある間仕切りはイスやテーブルなどと違いすぐに交換とはいきませんので、居抜き物件の内見の際には注意して見る必要があります。また、スケルトンから始める際も施工業者にしっかりと確認しておきましょう。
スライダックスは変えておこう!
風俗営業の店では店内の明るさが5ルクス以上と決められているため、明るさを自由に調整できるスライダックス(調光器)の設置は不可となっています。居抜き物件などで照明用のスイッチがスライダックスになっている場合は、実地調査までにはボタン式のスイッチに変更しておきましょう。
申請書を作成する
3つの要件のうち「人」「場所」の要件がクリアできていて、尚且つ「構造」の要件もクリアできそうであれば、ほぼ風俗営業許可を取得することは可能といえるでしょう。あとは警察での審査に耐えうるだけの書類を作成するだけです。
ただ、書類作成に関してはローカルルールが非常に多く、そのルール通りに書いてないとすべて直すよう言われてしまいます。警察のほうで修正してくれることは一切ないのでその都度警察まで出向く必要があり大変手間と時間がかかります。
警察での書類審査はかなり厳しく一字一句の間違えさえも見逃してはくれません。自分で申請する方も警察での書類審査の厳しさに耐えかねて途中から行政書士に依頼する方も少なくありません。
必要書類を集める
書類作成と並行して必要書類を集めます。集める書類はそれほど難しくはありませんが、状況により提出書類が増えることがあるので注意が必要です。
住民票、身分証明書を取る
身分証明書は被後見人や破産者でないことを証明するための書類で、市役所の窓口で取ることができます。ただし、身分証明書については本籍地の市役所でしか取れないので注意してください。また、住民票は必ず本籍入りのものを取得してください。
用途地域証明書
用途地域証明書はその名の通り用途地域を証明するための書類ですが、これも市役所にて取ることができるので住民票等と一緒に取ってしまいましょう。
市役所の都市計画課にて大抵15分程度の待ち時間で取ることができますが、市役所によっては当日発行されないところもあるので、その場合は面倒ですが後日再訪するしかないでしょう。
登記されていないことのないこと証明書
これは法務局で取ることが可能ですが、残念ながら支局では取ることができず本局まで行く必要があります。郵送でも取り寄せが可能なので本局に行くのに時間がかかる地域の人は郵送のほうがいいかもしれません。
登記事項証明書
店舗が入っている建物の登記簿(全部事項証明書)を取得してください。これは法務局であればどこでも取得が可能です。
所有者の欄をしっかり確認する
建物の登記簿については権利部(甲区)の所有者の記載が実際の所有者と同じ人であるかしっかり確認してください。また、住所も使用承諾書に記載してある住所と同じであるか確認してください。
まれですが、所有者が引っ越してるなどの場合は、使用承諾書と登記簿の所有者の住所が違うことがあるので注意が必要です。
賃貸契約書
申請の際には賃貸契約書の写しが必要なので、申請の前までには賃貸契約を済まして賃貸契約書を用意しておく必要があります。
賃貸契約書の内容は警察のほうでもしっかりと確認するので、風俗営業を行う上でおかしな契約内容が含まれていないかしっかりと内容を確認しておきましょう。
又貸し契約になっていないか確認する
一般的にサブリースと呼ばれるものですが、まれに契約の形態がこのサブリースになっていることがあります。
サブリースは契約自体に問題はありませんが、サブリースが非常にやっかいなのは物件の所有者の間に転貸人が入っているので両方から使用承諾書をもらわなければなりません。
また、所有者から転貸人への賃貸契約書の写しも必要となるので非常に手間暇が増えることになります。
すんなり用意してもらえればいいですが、場合によっては所有者から転貸人への賃貸契約書は出してもらえないこともあるので、サブリースの物件についてはこの辺の必要書類について事前に相手に確認しておかなければなりません。
住居表示証明書
これは店の場所が住居表示(地番表記でない)となっている場合に提出が必要となります。これは市役所にて取れますので、住民票等と一緒に取得するのがよいでしょう。ただし、市役所によっては発行してくれない場合があるのでその場合は疎明資料として上申書等を提出することになりますが、そういった状況になったら一度警察に相談したほうがよいでしょう。
顔写真を撮る
顔写真は管理者だけで結構です。証明用の3cm x 2.4cmのものを2枚用意してください。
物件の所有者から使用承諾書をもらう
私たち行政書士がこの手続きの中で一番気を付ける書類がこの使用承諾書になります。使用承諾書は内容に不備があった場合でも訂正するには所有者からの訂正印をもらわなければならないためもっとも気を付けて書類を作成します。
使用承諾書の様式に決まりはありませんが、申請書等と違い使用承諾書は警察のホームページに様式が載ってないことも多いのでその場合は行政書士がネット上で公開しているものを参考に作成するとよいでしょう。尚、必要な項目が入っていないと警察で受け取ってもらえないので内容はしっかりと確認しましょう。
大家さんから記名押印をもらうのは仲介業者に依頼するパターンと所有者から直接もらうパターンがありますが、仲介業者経由や郵送でのやり取りは非常に時間がかかることが多く、開業予定日に間に合わなくなることも考えられるので、所有者のところへ直接行ってハンコをもらうのが一番手っ取り早いですのでオススメします。
どうしても用意できない書類がある場合
必要書類のなかには相手の都合などによりどうしても用意できない書類が出てくることがあります。
その場合は申請先の警察との相談となりますが、不可抗力的な理由であれば上申書や理由書等の名目で、その理由を記載して提出することでOKとなるケースが多々ありますので、まずは警察に相談してみるとよいでしょう。
店内の測量をする
店の平面図を作成するために店内の測量を行いますが、この作業はこの手続きの中でもかなりしんどい作業といえるでしょう。店の面積によって作業時間は変わりますが、行政書士でも1時間~2時間程度、100㎡を超える店だとさらにかかると思われます。特にキャバクラのような装飾の多い店の場合は時間がかなりかかる傾向にあると言えます。
単位はメートルで、数値は小数点第2位まで測ります。メジャーでも計測は可能ですが、できればレーザー距離計の使用をオススメします。実地調査の際もレーザー距離計で測量されますし、広い店であればメジャーで測量できない部分も出てくるでしょう。
測量すると同時に、音響機器(スピーカー、モニター、カラオケ機等)の台数や配置、機種の詳細についても確認します。また、照明類の個数と配置についても確認します。弊所で測量の際は照度計にて店内の明るさも測定致します。
測量は横方向だけでなく高さについても注意が必要です。高さの面で特に注意が必要なのは「間仕切り」「カウンター前のイス」「テーブルや棚の上の設置物」については要注意です。これらの高さが1mを超える場合は、変えるかどかすかする必要があります。
図面を作成する
一般の人がこの申請をできない大きな理由の一つがこの図面作成だと思われます。建築図面ともまったく違いますし、この図面特有のルールに乗っ取って作成しなければならず、この図面が作成できないためこの業務を敬遠する行政書士も多いぐらいです。仮に書類の作成と収集は自分でやったとしても、図面作成だけは専門の行政書士に依頼することをオススメします。
<主な図面>
・平面図
・求積図
・照明配置図
・設備詳細図
・地域略図
・建物見取り図
所轄の警察へ申請する
申請の準備が整ったら所轄の警察へ書類を提出します。提出先は警察署内の生活安全課となりますが、提出の際は必ず事前に電話でアポを取ってから行くようにしましょう。いきなり行っても担当が不在だったり先客がいたりするのでいきなり行くのはやめましょう。
そのまま受理されればとりあえず一段落ですが、警察の窓口では必要書類の確認と、あとは最低限の内容チェックをされるだけなので細かいチェックは後日行われることになります。
実地調査を行う
書類の提出後、2,3週間を経て実地調査が行われます。
実地調査には県の浄化協会と所轄の警察署の風俗担当の方が店まで来られますが、店内の測量はほぼ浄化協会の方が行います。当日は提出した図面の内容と全く一緒のレイアウトにしておかなければなりませんので、調査開始の前に店内と図面を見比べて相違ないか確認しておいたほうがよいでしょう。
風俗営業には消防法と建築基準法も関係する
風俗営業を行う店舗の場合、3階以上または地下の店に関しては建築基準法と消防法が大きく関係してくるため、これらの階に店がある場合は実地調査の際に役所と消防署から検査に来ることがあります。
消防署は消防法について、役所は建築基準法について店内の確認が行われ、基準を満たしていない場合は改善するよう指導を受けることになり、後日改善計画書等の提出を求められることになります。
それぞれ別の法律なので風営法の基準をみたしていればとりあえず風営許可は下りますが、建築基準法と消防法についても基準を満たしていない場合は基準を満たすよう改善しなければなりません。
消防法については▶こちら
建築基準法については▶こちら
許可証を受け取る
実地調査にて問題ないことが確認されたらあとは許可が下りるのを待つだけですが、埼玉県では許可証の受取りは基本的に申請者本人(行政書士ではなく)が警察まで出向いて受け取る必要があります。許可証受取りの際に風営法についての注意点などをいろいろ受けることになるので申請者本人が受け取る必要があるわけです。
許可証が交付されれば晴れて営業を開始できるわけですが、申請から交付まで2ヶ月弱と非常に長い期間がかかるため、中には許可が下りる前に営業を始めてしまう方もいますが非常にリスクが高いためやめておくことをオススメ致します。
飲食店許可があるので接待を行わなければ営業は可能ですが、接待の有無は警察の主観によるものなので独自の判断は大変危険です。営業は許可が下りてから開始するようにしましょう。
警察の立入調査
地域によっては許可取得後3ヶ月ぐらいのあいだに警察が一度見回りに来ることがあります。その際には真っ先に従業員名簿を確認されるので、従業員の身分証のコピーと従業員名簿はしっかりと店内に保管しておきましょう。従業員名簿に不備があると後日警察署まで出向く羽目になってしまいます。